子供が学校で蚕を預かり、育てる事になりました。これが色んな意味で本当に大変で、もう蚕はこりごりです…。我が家の蚕授業体験談を紹介します。
小学校3年生の理科の授業で蚕を飼育することに
子どもの通う小学校では、3年生になると蚕を育てるという授業があって、噂には聞いていたのですがとうとう息子も蚕を育てることになりました。
虫嫌いの方にとってはなかなかハードな授業ですが、幸いにも私は家がヤモリやらニホントカゲやらアオダイショウやら様々なお客様が来る環境(都内です)に住んでいるので、蚕ぐらいなら無問題です。
蚕を育てる授業の内容は?
息子の学校の場合のお話ですが、蚕の卵を養蚕業の方から学校が譲り受け、卵が孵るまで学校で観察します。
卵から孵って少し経ってから生徒1人1人の希望数(上限5頭まで)を学校で振り分けられて、各自で育てるという内容。
蚕を持ち帰るために箱を用意して、ある日蚕を大切そうに連れ帰ってきました。(もちろんマックスの5頭)
蚕を育てる期間は?
子どもが蚕を連れ帰ってきたのは6月上旬頃。
それから、羽化した蚕を看取ったのが7月下旬なので、約2ヶ月ほど蚕と過ごしたことになります。
後ほど詳しくお話しますが…最初は蚕の成長を喜んでいた息子、蚕が繭になる頃から本当に大変な思いをしました。
桑の葉の調達も自分でする
蚕を育てるにあたり、桑の葉を調達するのですが、桑の葉が自生している場所はないので、近隣の農家さんが小学生たちのためにわざわざ桑をたくさん育ててくれています。
蚕は新鮮な桑の葉をたくさん食べます。
桑の葉は乾燥しやすいので、こまめに調達しに行かなくてはなりません。
さて、そんな感じで始まった我が家の蚕飼育ー
最後はどうなったのでしょうか。
母はどう答える?小学生が蚕の飼育で大変だった体験談【前編】
さて、我が家の蚕飼育は順調なスタートを切りました。
息子は蚕が可愛くて仕方ない、そしてこまめな世話をする。
主にアシストする私は蚕が苦手ではない。
何なら夫は養蚕業が盛んだった群馬出身という、蚕の受け入れ態勢は万全の状況です。
息子は、それはもう大切に大切に育てました。
ある日、蚕の行く末を知ってしまった子供
ところが、ある日ひょんなことから、息子は蚕の行く末を知ってしまいました。
「蚕はね、繭になったら茹でるか冷凍して、キーホルダーにするんだって!」
習い事の際に同級生の女子とママにばったり会って蚕の飼育について話をしていると、女子から衝撃の一言が。
この時、親にはまだ繭になった後蚕がどうなるのかは知らされていませんでしたが、私もそれなりの年齢なのでそんなことだろうとは想像していました。
が、凍てつく息子の表情…
これは波乱の予感。
蚕の未来に取り乱す子供
帰宅後、息子から「繭を冷凍するってどういうこと?」と質問攻めにされたことは当然のことと言えましょう。
「冷凍するって、殺すってことだよね?」
「何のために?キーホルダーにするために?」
「僕は殺すために育てているの?!」
「そんな事で生き物を殺していいの?!」
…ヤバい。
まずい方向に向かってしまった。
ここで正しい道に導いてあげないと、息子が蚕のトラウマにより過激な思考を持ってしまうかも知れない…そう思った私ですが、
まぁ私もはっきり言って繭のキーホルダーが必要かと聞かれれば必要ではない。
いやいや、それではダメだ、しっかりと蚕を育て繭にする意義を伝えなければ!となんとか気の利いた言葉をひねり出そうとしましたが、無理でした。
「僕はキーホルダーなんていらない!」
日頃あまりこんな風に強く断言することがない息子史上、最強の断言でありました。
担任の先生にばったり会った際にヘルプ…!
ここはもう、担任の先生のお力を借りるしかないと思いつつ、こんな事で忙しい先生のお時間をいただくのは心苦しい…そんな風に考えていた時、どんな運命の悪戯か、子供が体調を崩し1週間休むことになり、担任の先生とお話する機会があったのです。
その際に、正直に「どうフォローすれば良いのか困っています。なにか良い伝え方はありますか?」と伺いました。
すると、「蚕の授業は家畜・畜産についての勉強です。」と教えてくれたのです。
私はてっきり命の勉強だと思っていたので、「命の大切さを学ぶのに最後はキーホルダーってサイコパスかな?」と思ったものですが、そうではなく。
確かに命について学ぶ機会ではあるけれど、そもそも家畜や畜産についての勉強として蚕を育てる経験をする、という事でした。
いやはやなるほど、そう考えるとフォローのしようがあるかも知れません。
蚕は、人の暮らしを豊かにするために人の手で育てられている存在。
だから「一頭・二頭」と数える。つまり私たちがいただく牛や豚と同じ。
私たちの暮らしは、様々な命があってこそ成り立っているのですね。
今の姿の蚕に、もう会えなくなる…
蚕を育ててしばらくすると、蚕が天を仰ぐような仕草をするようになりました。
そう。そろそろ繭を作る頃です。
学校の指示どおり、息子はトイレットペーパーの芯を蚕の数と同じだけ用意して、準備をしてあげました。
糸を吐く蚕を見て、「不思議だね」「神秘的だね」なんて最初は話していたんですよ。
でも、日に日にに見えなくなる蚕に、ある日、息子号泣…
「もう蚕のこの子に会えなくなっちゃう!!!」としゃくりあげて泣くではありませんか。
そ…そんな…!いやでも確かに…
翌朝、とうとう繭になりました
泣きじゃくり疲れて眠った息子が泣きはらした目で起き、真っ先に向かった先は蚕。
すると、朝っぱらから()再びの泣き。
最初に糸を吐き出したファーストチルドレンが完全に繭になり、見えなくなってしまったのです…!
まだ中で動いている様子はあるのですが、もう息子の前に姿を表すことはないでしょう。
続いて2〜4頭目も糸を吐き出すように…
全員同時期に糸を吐き出して繭になってくれれば泣くのも1回で済んだのでしょうけど、微妙に繭になる時期がずれ、1頭がみえなくなりつつあると号泣。
その悲しみが落ち着いたかと思う頃にもう1頭が見えなくなり号泣、そんな事を繰り返し、毎晩のように号泣をし、泣きつかれて眠る息子に、母もぐったり…
そして最後までたらふく桑の葉を食べ続けたフィフスチルドレンがとうとう穴にイン。
これでもう、すべすべの可愛らしい蚕とはサヨナラ…
でも、この時は「これでようやく、号泣騒ぎも終わりだ」と思っていたんです、よ!!
まさかの展開…!小学生が蚕の飼育で大変だった体験談【後編】
フィフスチルドレンが糸を吐き出し、減らない桑の葉がなんだか寂しい。
すっかり中が見えなくなった繭は、以前のように蚕が一生懸命糸を吐き出しているのが感じられるような気配もなくなり、日に日に美しくなっていきます。
繭の美しさに感動しながら息子は、蚕が繭になった事実を子供なりに受け入れ、変わった様子もなく元気に過ごしていました。
繭の冷凍する覚悟を
繭がしっかりとしてくると、今度は“繭を冷凍させる”工程をしなくてはなりません。
とはいえ、担任の先生が優しい先生で「どうしてもできない場合は先生が冷凍するから先生に預けてね」と生徒に伝えていたのだそう。
ただその場合、最後の繭工作で自分が育てた繭ではない繭を使わなくてはならないという条件がつきます。
命について家畜について体験し、何かを感じたのか息子は「繭工作は自分の育てた繭で」と強く希望したのです。
そのため、自分の手で冷凍をする事にー
ところが、もう動く気配もないとはいえ、なかなか繭を冷凍庫に入れる覚悟ができません。
息子は「全員、完全に蛹になってから冷凍をしたい。もしかしたらまだ中で蚕が糸を吐いているかも知れない」そう言い、時を待ちました。
ところがー
息子が怪我をして体調を崩し、繭の存在を忘れる
蚕の事で大騒ぎだった6月は本当に毎晩大変で、やっと息子も落ち着いてきたという矢先。
なんと息子が激しく転び頭をぶつけてしまったり…
それだけでなく、
突如の発熱、、、
などなど、バタバタと過ごしているうちに数日経ってしまったのです。
幸いぶつけた頭は特に異常はなく、発熱も新型コロナは陰性、息子の体調が落ち着いた時、私はハッとしました。
繭、冷凍してないじゃんと。
慌てて繭が入った箱を開けると…
なんと3頭がすでに羽化していたのです\(^o^)/
担任の先生に事情をお話し、クラスメイトには内密にしておくことなどをすり合わせ、我が家は「命とのお別れ第二章」に突入することとなりました…。
(羽化していなかった2つの繭はすみやかに冷凍しました)
カイコガの命は約1週間
本当はダメだった羽化をうっかり(韻を踏む)させてしまった我が家。
息子は小さなカイコガをそれはもう可愛がりました。
2頭はとても美しく、元気。
けれどもう1頭は、見るからに弱そうで羽も小さく身体も小さいです。
カイコガの命は約1週間と言われています。
羽化を確認したのが7月10日なので、どんなに遅くても夏休みがスタートする頃に寿命を迎えるという感じだったのです。が…
なぜか長生きしてしまうカイコガ
なぜか長生きしてしまうカイコガ…
息子に再び情が湧いてしまいました。
最初にカイコガが亡くなったのが羽化確認後2週間ぐらい経ってから。
結局、最後にカイコガが亡くなったのが7月下旬という結果に。
カイコガは1頭1頭亡くなったので、そのたびに息子の情緒が再び乱れ、最後のカイコガが亡くなる時はそれこそ一晩中泣きはらすような状態でした。
最後のカイコガを看取り、全員庭に埋めて、これで我が家の蚕飼育が終了したのです。
飼育した蚕で繭工作、その結末は
我が家は2つの蛹入り繭と、羽化させてしまった3つの繭(少し溶けた状態)で工作をすることになりました。
息子が作ることにしたのは、なんと蚕。
溶けてしまった繭の汚れた部分をうまく切り取って、組み合わせて芋虫状にして蚕を作ることにしたのです。
繭工作の時に色々思い出してしまわないか心配だったのですが、帰宅した息子の様子はあっけらかんとしています。
それどころか、息子がこう言い放ったのです。
「臭くて吐きそうになってしまった…もう蚕はいいや」
えっ…そんなオチ…
小学生の蚕の飼育体験はどうだった?
小学校の蚕の飼育体験はある意味良い想い出になりました。
母としてはフォローが大変だったし、オチに盛大に「おい!」と言いたいところではありますが、子供にとっても良い経験になったと思います。
子供の意外な一面も知ることができたし…まぁもう二度とごめんですね…
皆さんも、うっかり羽化させないように気をつけてください。